社会人スケーターの先駆者、山田耕新!全日本での活躍が心を揺さぶる(動画も)

いったんは引退して就職しながら、リンクに戻ってきた山田耕新(やまだこうしん)選手は28歳。現在は平日は銀行員として働きながら、週末にアスリートとしてトレーニングにはげんでいます。2018年の全日本フィギュアスケート選手権ではフリーに進み、20位と前年から成績をあげました。現役復帰した髙橋大輔選手は関西大学での先輩です。


山田耕新、全日本フィギュア2019へ出場を決める!

11月3日の西日本選手権で、171.25点、全日本選手権への出場を決めた山田選手。5年連続9回目の出場です。素晴らしい!

今年、足の手術をしたことで可動域が広がり「身体の調子はいまがいちばんいい」と語っていたそうです。演技後の笑顔がいいですね。

フリーは今季の新プログラム「ライオンキング」。

9月に映画をみて、友人に「この曲で滑ってみたら?」と言われてピンときた山田選手、その場でキャシー・リードコーチに電話をして振り付けを依頼したそうです。

振り付けしてから2ヶ月弱ですが、ジャンプのミスはあったものの、ステップの表現もよくて、解説の村上佳菜子さんも「短期間でよくここまで仕上げてきましたね」と感心していました。

町田樹(まちだたつき)さんの「火の鳥」(ソチ五輪で滑ったプログラム)を見ていて、「動物のプログラムは難しいな」と感じていたそうですが、「いままで滑った中で、いちばん気に入っているプログラムになった」とのこと。

スケートは自分の人生と語っている山田選手。フルタイムで銀行に勤めながらスケートを続けていて、笑顔に充実感を感じますね。

全日本選手権での演技も楽しみです!


山田耕新選手は 福岡出身の28歳

長野オリンピックでスピードスケート金メダルをとった清水宏保(しみずひろやす)に憧れて、6歳でスケートをならい始めた山田選手。しかし、そこで教わっていたのは、フィギュアスケートだったそう。

「小さかったので、スケートに種類があると、わからなかった」。スピードスケートとフィギュアスケートの違いがわかるようになるまで、2年くらいかかったそうです。微笑ましいですね。

どちらにするか迷ったこともあったそうですが、フィギュアスケートの道に進み、スケートの強豪関西大学に進学、大阪へ移ります。

清水宏保さんが着ていた「ジャパンジャージ(日本スケート連盟強化指定選手に与えられる)」に憧れ、「かっこいい、いつかあれを着たい」という子どものころの夢を持ちつづけ、競技に打ち込みます。

全日本選手権に出場するも1、2年時はフリーに進めず、敗退。3年生のとき、フリーへ進み、総合19位となります。(シングルには、男女それぞれ32人が出場、ショートプログラム24位までの選手がフリーに進めるきまり)

好きな選手はトマシュ・ベルネル。美しいスケーティングとこだわりの表現力が魅力だそう。

コーチのことばに奮起して納得の演技を果たし、大学卒業と同時に引退

全日本でやっとフリーに進めた。大学生活はあと1年しかない。

多くのフィギュアスケート選手が大学卒業と同時に競技を引退する現状で、4年生になった山田選手が、「競技をつづけたい」と願ったのは無理からぬことでしょう。

コーチの濱田(美栄)先生にもう少し学生を延長して競技をやりたいという思いを訴えたところ、「そういう甘い考えでは身に付く技術も身に付かない。最後の1シーズン、自分を信じて、今の自分のスケートに賭けてみなさい」と。

「関西大学の学生としてここに入っているので、その役割もきちんと認識して、4年で卒業して就職するという道を進み、与えられた使命を果たしなさい」ということを強く言われまして。そこで初めて僕も引退を決断しました。それが大学4年の始めか3年の終わりですね。(『VictorySportsNews』 インタビュー・文=Pigeon Post ピジョンポスト 江口美和)

山田選手は、大学4年の全日本選手権(2013年)のフリーで、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を組み込んだノーミスの演技を決め、引退。自己最高の16位にのぼりました。

最後の全日本では覚悟があったので。その気持ちが前面に出るような、“3アクセルを組み込んでノーミス”の演技になりました。それまで成し得なかったことが(フィギュアスケート会場として)一番大きなさいたまスーパーアリーナという場でできたので、本当に綺麗な形で引退できて、次の社会人という新しいステージに駒を進められたと思っています。今こうやって社会人スケーターをやるにあたっても、あの時濱田先生の言葉を受け止めて、自分の役目に覚悟をもってケジメをつけられたから、道を切り開くチャンスを与えてもらえているのかなと思っています。(『VictorySportsNews』 インタビュー・文=Pigeon Post ピジョンポスト 江口美和)

全日本選手権は選手にとって、1年の集大成です。とくに2013年の全日本選手権はソチオリンピック代表選考もかねて、客席も気合がはいって、独特の異様といってもいい雰囲気に会場が包まれます。選手の緊張からミスも起こしがち。

そんな大舞台、それもさいたまスーパーアリーナという国内最大級の会場でノーミスの演技を果たした山田選手は、観客の心をつかみました。

浅田真央さんはじめ、多くの選手が「ノーミスでできるように」と口にするくらい、ミス無く滑りおえることは難しいことです。どの選手も自分の限界まで難易度をあげてきているので、一瞬の踏み切りのズレ、すこしのタイミングのズレがミスにつながります。

集中が高まり、かつ切れないで最後までつづくとき、演技がミス無く終わる。そのときの演技の気迫は観客にも伝わり、やりとげた選手のはじける喜びを客席もともにしています。それがスケート観戦の魅力だなあと。

ほんとに、このときの山田選手はすごかったです。



平日は銀行員として働きながら、2015年、試合に復帰。所属は三井住友銀行(SMBC)

有終の美を飾り引退。すっきりした気持ちで社会人となり、銀行員として働きはじめ、リンクを離れていました。

転機になったのは2015年、福岡県スケート連盟主催で安藤美姫さんも参画された東日本大震災救援のアイスショー(東日本救援滑走会)に誘われたことでした。

やるからにはしっかりした演技をしたいと練習したところ、「まだ戦える」と。「スケートのもっと奥深いところを追求できる」と感じました。(『VictorySportsNews』 インタビュー・文=Pigeon Post ピジョンポスト 江口美和)

10数年、蓄積した疲労が1年以上スケートから離れたことでリセットされて、以前よりも筋肉のしなりを感じたそう。

そして決意した現役復帰。社会人スケーター山田耕新選手の誕生です。

フルタイム勤務しながらのため、大学時代は週24時間とれていた練習時間は、三分の1ほどになりました。

しかし、ショートプログラムもフリーも毎年、パーソナルベスト(自己最高得点)を更新し、全日本選手権に3年連続出場。また、中四国九州ブロック大会で初優勝も果たすなど、進化をつづけています。

やっぱり、スケートって人の性格だったり生き様だったり、そういったものが全て出るものだと思ってるんですね。氷以外で成長した部分が何かしらの形で絶対に演技に反映してくると。

社会人になって色々な経験をして積み重ねた想いが、表現力という形で間違いなく僕の演技には出ていると思うので、そこは学生時代よりも遥かに良くなったんじゃないかなと。

技術的にも、3アクセルの質、確率もかなり上がっていますし、ジャンプ構成に関しても学生時代よりも高いレベルでやっています。課題になっていたスピンも、シーズンごとに少しずつ良くなってきて、レベルも取れるようになってきました。逆に今、学生時代と比べて衰えてきてるなって感じる部分はひとつも無いです。

(『VictorySportsNews』 インタビュー・文=Pigeon Post ピジョンポスト 江口美和)

CS放送、日テレプラス「荒川静香 Friends+α 2018-19」でみた、山田選手のこの笑顔。充実感があふれていました!

(8月12日追記)

2019−20シーズンがスタートして、滋賀県で8月におこなわれた「げんさんサマーカップ2019」で10位となりました!

マイケル・ジャクソン、かっこいい〜〜ですね!


山田耕新選手の演技をみた全日本選手権の会場で、高橋大輔が復帰を決意!

社会人スケーターとして、道を開いていこうと努力する山田選手は、多くのスケーターにも影響を与えています。

その一人が、2018年に現役復帰した、髙橋大輔(たかはしだいすけ)選手!

2017年の全日本選手権をコメンテーターとして会場で見ていた高橋さん。選手の演技を見ていく中で膨らんだ思いがあったそうです。

全日本選手権の会場で、その「自分は何をしたいんだろう」の答えが「復帰だ」と、ピンときたんです。一瞬でした。それが一番しっくりくる選択肢だった。「復帰しようかな」と思ったのと「復帰する」と決意したのが同じタイミングでした。迷いなく、もう復帰するんだ、という気持ちになれました。(『VOGUE』インタビュー「挑戦を止めないという選択── 髙橋大輔、現役復帰への覚悟を語る。」)

とくに、山田選手と山本草太選手の演技に価値観が変わるほど、心を打たれたとのこと。

全日本選手権では、山本草太くん、山田耕新くんという、もともと一緒に練習していた選手たちから特に大きな刺激を受けまし た。

山田耕新くんは、大学卒業を機に引退し、就職して社会人となった後、また現役復帰をして会社員と両立させながらスケートを続けるという選択をした選手です。 僕は全日本で久々に彼のスケートを見たのですが、そのときに今までの価値観を揺さぶられるような気持ちになって……

それまで僕は、世界のトップレベルで勝つことだけが選手としての自分の目標だと思っていて、そこで勝てないならスケートをやる意味はないというような考えを持っていました。でも、それぞれの目標で精一杯頑張って、それで自分の目標を達成できたとき、いい演技ができたとき……そのときの選手の表情、場の空気、お客様が感動している姿……それを目にしてものすごく感動してしまって。世界で勝つことだけが自分の目標ではないのではないか、現役でいてもいいんじゃないか、と強く思ったんです。

(『VOGUE』インタビュー「挑戦を止めないという選択── 髙橋大輔、現役復帰への覚悟を語る。」)

そのときの山田選手のショートプログラムをごらんください。

浮遊感のある、きれいなスケーティングでよく伸びますね!

そして、本当に楽しそう。

多くの選手が大学卒業とともに引退する中、社会人スケーターの先駆者として活躍する山田耕新選手。今季の演技も楽しみです!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

なお、『VictorySportsNews』(インタビュー・文=Pigeon Post ピジョンポスト 江口美和)、『VOGUE』インタビュー「挑戦を止めないという選択── 髙橋大輔、現役復帰への覚悟を語る。」から引用させていただきました。
どちらも選手の思いに迫るすばらしいインタビューでした。ありがとうございました。


コメント

  1. […] それは、右足首の大ケガから復帰した山本草太(やまもとそうた)選手、社会人4年目の山田耕新(やまだこうしん)選手です。 […]

  2. […] 山本選手は、前の記事で書いた山田耕新(やまだこうしん)選手とならんで、高橋大輔選手に復帰を決意させたひとりです。 […]

  3. […] 山本選手は、前の記事で書いた山田耕新(やまだこうしん)選手とならんで、高橋大輔選手に復帰を決意させたひとりです。 […]